新電力特集記事

2023年の再エネ賦課金は値下がりする可能性もあるって本当?

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【2023年3月24日追記】
2023年度の再エネ賦課金単価は1kWhあたり1.4円で確定しました
この記事の監修担当
SFP

新エネルギーメディア事業部 編集班
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2023年の再エネ賦課金はどうなる?

この記事は2022年9月に投稿した過去記事になります。あらかじめご了承ください。
こうた
”再生可能エネルギー促進賦課金(そくしんふかきん)って、太陽光とか風力とかバイオマスなんかの発電所を増やすための税金みたいなものだよね?(以降は”再エネ賦課金”に略します)
清水
まあ、わかりやすく言うとそんな感じですね。

正確には、「太陽光風力水力地熱バイオマス」のいずれかで発電した電気を一般送配電事業者などが一定期間・一定価格で買い取るための費用の一部を、”再生可能エネルギーの固定価格買取制度(通称:FIT)”にもとづき電気の消費者から広く平等に集めるための賦課金です。

「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。
電力会社が買い取る費用の一部を電気をご利用の皆様から賦課金(ふかきん)という形で集め、今はまだコストの高い再生可能エネルギーの導入を支えていきます。
固定価格買取制度が導入された2012年7月以降、日本の再生可能エネルギー発電の導入量は世界的にもトップクラスのペースで増加しましたが・・・
※資源エネルギー庁 PDF資料「2030年に向けた今後の再エネ政策」6ページ参照
1kWh(キロワットアワー)あたり再エネ賦課金の単価も、年を追うごとに右肩上がりの状況です。
再生可能エネルギー発電促進賦課金の単価推移表
また、少し古い資料ですが2013年当時の環境省の試算では、再エネ賦課金単価は2030年頃まで値上がりが続く予測もされています。
※環境省資料「平成25年度2050年再生可能エネルギー等分散型エネルギー普及可能性検証検討報告書」294ページ参照
平成25年度2050年再生可能エネルギー等分散型 エネルギー普及可能性検証検討報告書|環境省)
これは再エネ電気の固定価格での買い取り期間が、最長20年であることが主な根拠(こんきょ)となっています。
こうた
じゃあ、これからまだ8年間も値上がりが続くってこと?
清水
いえ、それが来年2023年度の賦課金単価は大幅に値下がりする可能性も出てきました。
こうた
そうなんだ!?
でも、なんで値下がりするの?
再エネ発電所が減ったってこと?
7~8年前と比べると事業用太陽光発電所の新設は減少しているものの、再エネ発電自体はとくに減少はしていません。
ですから筆者も来年の再エネ賦課金は値上がりすると思い込んでいましたが・・・
世界的なエネルギー価格の上昇や円安などの影響で、どうやら2023年はこれまでとは異なる値動きになりそうです。
それについて詳しく説明する前に、まずは「再エネ賦課金の単価はどうやって決められているのか?」について簡単に解説しましょう。

再エネ賦課金単価の算定方法について

再エネ賦課金の単価は下図の算定式にもとづき、毎年4月に経済産業大臣が改定しています。
※毎年3月末頃に新単価の発表があり、4月使用分より適用されます
再エネ賦課金の単価の算定式
再エネ賦課金の1kWh(キロワットアワー)あたり単価 ① は、『( ② 再エネ電気の買取費用 + ③ 広域機関の事務費 - ④ 回避可能費用 )÷ ⑤ 再エネ電気の販売量 』によって算出されます。
過去5年の賦課金算定における①~⑤のデータは以下の通りです。
22年度 21年度 20年度 19年度 18年度
①再エネ賦課金の1kWhあたり単価 3.45円 3.36円 2.98円 2.95円 2.9円
②再エネ電気の買取費用 4兆2,033億円 3兆8,434億円 3兆8,478億円 3兆5,833億円 3兆694億円
③広域機関の事務費 17億円 3億円 3.2億円 3億円 2.9億円
④回避可能費用など 1兆4,609億円 1兆1,448億円 1兆4,774億円 1兆1,546億円 6,971億円
⑤再エネ電気の販売量 7,943億kWh 8,036億kWh 7,967億kWh 8,237億kWh 8,184億kWh
こうた
②の「再エネ電気の買取費用」と、③の「広域機関の事務費」ってのは何となくわかるんだけど・・・
④の「回避可能費用」って何なの?

回避可能費用(かいひかのうひよう)とは

”回避可能費用”とは、再エネ電気を買い取ることによって削減できた(とみなされる)電気の調達コストなどを指します。
再生可能エネルギー発電による電気の調達量(kWh数)が増えると(=買い取ると)、それまでに予定していた火力発電などによる電気の調達(≒調達コスト)は不要になりますので、
再エネ賦課金の算定時には、この不要になった(とみなされる)調達コストの平均額が再エネ電気の買取費用から差し引かれています。
再エネ賦課金の単価の算定式 (注)実際の回避可能費用には平均調達コストの他に、再エネ導入が見込みを下回った際の剰余金(じょうよきん)非化石価値(ひかせきかち)取引収益なども含まれます

再エネ電気の買取費用と回避可能費用のかんたん解説

4コマ漫画
上記イラストでは分かりやすさを重視し、あえてシンプルな表現にとどめているため、人(立場)によっては誤解(ごかい)を招くこともあるかもしれません。
回避可能費用について詳しく説明しようとすると難解(なんかい)な話になりますので、より正確な情報を知りたい方は経済産業省 資源エネルギー庁の資料などをあわせて参考にしてください。
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/006_04_00.pdf

エネルギー高騰で回避可能費用が大幅アップ!?

2022年はロシアによるウクライナ侵攻の影響で、原油や天然ガスなどのエネルギー価格が世界的に高騰しています。
日本卸電力取引所(通称:JEPX)の市場価格もそれに引きずられ、前年対比1.5~2倍以上の価格で推移しました。
日本卸電力取引所のスポット市場の価格推移グラフ
ただ、先ほど説明した『回避可能費用』の単価は、じつは卸電力取引所の市場価格に連動しています。
そのため、ここ数年1.1兆~1.4兆円の間を推移していた回避可能費用は、2023年度の算定では1.5倍以上の増額となる可能性もあります。
それに対して2023年度の『再エネ電気の買取費用』はFIP(フィップ)制度への移行もあって、大幅に増加する可能性は低いはずです。
ですから買取費用から回避可能費用を差し引いた再エネ賦課金の総額は、前年度よりも減少することが予想されるわけです。
2022年の再エネ賦課金と2023年の再エネ賦課金の算定予想

実際はフタを開けてみないと分からない

とはいえ、2021年から高止まりしていた原油価格も、この記事を書いている時点では一転して急落が続いています。
原油価格と卸電力取引所の市場価格は密接に関係しているため、このまま下落が続くようであれば来年の再エネ賦課金単価の算定時における回避可能費用も低く見積もられるかもしれません。
また、現在の電力業界は混乱の最中(さなか)にあり、逆ザヤ販売(※)余儀(よぎ)なくされた電気事業者も多くありました。
(※)売れば売るほど逆に赤字になること
再エネ電気の買取義務を負う一般送配電事業者にも法規制によるしわ寄せが見られましたので、そういった損失分を何らかの形で回避可能費用と相殺するようであれば、再エネ賦課金の減額にはならない可能性もあります。
こうた
なんだよ、せっかく来年は安くなると思ったのに・・・
それじゃあ、ぬか喜びじゃん。。。
清水
まあ、でもこれから再生可能エネルギーの電気を選ぶ人たちが増えれば、再エネ賦課金もそれだけ安くなりますよ。

再エネ電気を選ぶ人が増えると賦課金は安くなる

経済産業省の公開資料によると、”回避可能費用”には非化石価値取引市場の収益なども含まれています。
ですから、より多くの人たちが実質的な再生可能エネルギーによる電気を選ぶようになれば、今後の再エネ賦課金の値下がりにもつながります。
※実質的な再エネ電気について詳しくはこちらの記事をご覧ください↓
近年はさまざまな企業が実質的再生可能エネルギーによる電気を販売しており、たとえば関東エリアでは東京ガスの『さすてな電気』や東京電力エナジーパートナーの『アクアエナジー100』がそれに該当します。
自治体によっては補助金や特典を用意していることもありますので、この機会に申し込みを検討してみてはいかがでしょうか。
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