電気ガス Q&A

「実質的に再エネ100%電気」って何ですか?再エネとの違いは?

「実質的に再エネ100%電気」って何ですか?
こうた
「実質的に再エネ100%の電気」と「再生可能エネルギーで発電した電気」は何がどう違うの?
この記事の監修担当
SFP

新エネルギーメディア事業部 編集班
小売電気事業・都市ガス小売事業・太陽光発電事業・家庭向け蓄電池販促事業などの広報を担当
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「再生可能エネルギーで発電した電気」とは?

『再生可能エネルギー(=再エネ)』とは太陽や風力、水力、地熱、潮力、バイオマスなどの”枯渇(こかつ)する心配がないエネルギー資源”を指します。
再生可能エネルギーで発電した電気のイメージ画像
これらの再エネ資源を使って発電した電気は、発電時に二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しないことから”『環境価値』がある”とみなされています。
(※)カーボンフリーやカーボンゼロの電気などとも呼ばれています
(※)化石燃料(石炭や天然ガス等)で発電した電気には環境価値があるとはみなされません
清水
再生可能エネルギーで発電した電気は、化石燃料を使って発電した電気とは違って「カーボンニュートラルを実現できる価値がある」と公的に認められているわけですね。

再生可能エネルギーによる電気の”環境価値”の対価

私たちが日々使用している電気には化石燃料だけでなく、再生可能エネルギーで発電した電気が含まれており、個人法人どちらも使用した電気の量に応じて国に「再生可能エネルギー発電促進賦課金(はつでんそくしんふかきん)(再エネ賦課金)」を支払う義務が定められています。
言うなれば、私たちは再生可能エネルギーで発電した電気の”環境価値”の対価として再エネ賦課金を支払ってもいるわけです。
こうた
僕たちが電気代と一緒に払っている「再生可能エネルギー発電促進賦課金」は、環境価値のためでもあるってことか。
そんなこと考えたこともなかったよ。

電力会社が販売する電気に環境価値はない

”再エネ賦課金(ふかきん)”≒”環境価値の対価”は、電力会社ではなく国に対して支払われていますので、電力会社(≒小売電気事業者)が通常販売している電気には「環境価値」は含まれません。
なぜなら国に”再エネ賦課金”を支払うということは、それはつまり国(≒私たち)が再生可能エネルギー由来の環境価値を保有していることになるからです。
私たちが使用量に応じて再エネ賦課金を支払っている電気の”環境価値”は国が保有しており、その電気を販売する小売電気事業者は環境価値を保有していません。
ですから、たとえ太陽光や水力発電所で作られた電気であっても、国に対して再エネ賦課金を支払っている以上、各電力会社が販売目的で「再生可能エネルギーの電気である」といったアピールを行うことはルール違反になります。
(※)自分が持っていないモノ(=環境価値)を持っているように見せかけて売ろうする行為は、いわば詐欺(さぎ)にあたるからです
清水
再生可能エネルギーで発電した電気には”環境価値”がありますが、それを販売する電力会社には「環境価値のある電気(=再エネ発電の電気)」として売る権利はない、ということです。
ややこしい話ですね。

電力会社も環境価値を販売できる仕組みがある

しかしながら近年は地球温暖化防止の世界的なムーブメントの高まりもあって
「二酸化炭素(CO2)の排出量が少ない電気を使いたい」
とか
「再生可能エネルギー100%の電気を使いたい」
などといったニーズが個人法人ともに増加傾向にあります。
そこで国は、小売電気事業者(こうりでんきじぎょうしゃ)も「環境価値がある電気」を販売できるように条件を満たすことで”実質的に再生可能エネルギー100%由来の電気”とみなされる仕組みを整備しています。

「実質的に再生可能エネルギー100%の電気」とは?

一般家庭や事業所にはあちこちの発電所で作られた電気が混じり合った状態で届いていますので、再エネ由来の電気だけを物理的に取り出すことはできません。
また、再エネ発電所で作られた電気だけを販売していたとしても、再エネ賦課金を徴収している電気の環境価値は国の保有とみなされるため、小売電気事業者がそれを”再エネ100%の電気”として販売することもできません。
しかし非化石価値取引市場(ひかせきかちとりひきしじょう)などを通じて、電力会社(≒小売電気事業者)が「環境価値の証明書」を購入すると、指定の電気料金メニューについては「実質的に再生可能エネルギー100%の電気である」といったアピールが可能になります。
つまり、実質的に再生可能エネルギー100%の電気とは、電力会社が「環境価値の証明書」を購入することによって環境価値を付加した電気を指しているというわけです。
「環境価値の証明書」には ”非化石証書”や”J-クレジット”、”グリーン電力証書”などがあります。
清水
各事業者は非化石証書などを購入すれば、自社で販売する電気が”実質的に再生可能エネルギーの100%の電気”とか、”CO2排出量が実質ゼロ”といったことをPRできるようになる、ということですね。
合わせて読みたい参考資料
(PDFになるためパソコン等でご覧ください)
経済産業省 資源エネルギー庁「非化石価値取引市場について」
上記の経済産業省の資料にも『再エネ価値証書を充てることで「再エネ電気として調達している」ことをうたうことが可。』と記載されています。

実質再エネ100%の電気に意味はあるのか?

ここから先は、筆者の個人的な考えになりますが、
実体のない非化石証書やグリーン電力証書などにお金を出して”実質的に再エネ100%”とみなされたところで、個人の「環境保護や環境保全に貢献したい」という真摯(しんし)な思いはそれによって本当にむくわれるのか?
筆者はこういった電気料金メニューの「環境価値の有効性や真偽性(しんぎせい)」には正直いって懐疑的(かいぎてき)です。
お金を払えば「化石燃料を燃やして作った電気ではない」とうたうことが出来るだけで、私から見れば詭弁(きべん)(道理に合わない、言いくるめの議論)に過ぎません。
しょせん経済産業省のFIT(フィット)制度の修正のために都合よく使われるだけでしょう。

”FIT制度の修正”については少々難しい話になります。
あえて簡単に言うと
「非化石証書などに進んでお金を払う消費者が増えれば、その分だけ再エネ賦課金による国民全体の負担金を減らせることを役人などが期待している」
ということです。

そもそもの話ですが、再生可能エネルギー発電所を増やすことが必ずしも環境に良いとは限りません。
化石燃料の代替にすることでCO2のさらなる排出を抑制できるとはいえ、それによって「私たちの環境が良くなる」という証明は世界中の誰1人出来ていません。
(注)急速な気候変動の回避は期待できるとされています
多くの企業は環境を良くするためというよりも、環境配慮への取組が自社価値の向上に繋がりうる情勢であることを踏まえて、あくまでも自社の発展のために再エネ電気を取り入れています。
イメージ画像
なお、筆者はCO2排出量実質ゼロを目標とすることや自社発展のための行為を否定するつもりは一切ありません。
そういった取り組みは経済発展のためにも必要ですし、それをアピールすることで何かを得ようとする目的がある企業にとっては有意義なことだと思います。
しかし環境保護や環境保全を名目として、一般家庭に対して再エネ電気の販売を目論むことは詭弁(きべん)にあたります。少なくとも筆者はそう考えます。
(注)ただし日本国のエネルギー自給率を高めるためにとか、経済や新たな産業発展のために再エネ拡大を推進しようというのであれば納得のいく話です
一般家庭が「実質再エネ100%」や「CO2排出量実質ゼロ」といった価値に余分なお金を出したところで、企業のように名声を得られるわけでもなく「環境保護や環境保全に貢献したい」という個人の思いがむくわれるとも限りません。

環境のために個人ができること

ただ、だからといって何もせずに安さ(経済性)ばかりを追いかけているようでは環境保護や環境保全にはつながりません。
ですから一般家庭や個人の方々には
  • 無理しない範囲で節電に努める
  • 古い家電は省エネ家電に買い替え、リサイクルに出す
  • 省エネに優れた長期優良住宅を建てる
  • 住宅の省エネ改修工事(省エネリフォーム)をする
  • 草木や花を育てる時間を持つ etc.
こういったところに意識を向けることを提案します。
環境のために個人ができることのイメージ画像
電気代に余分なお金を払わなくても、私たち個人が環境保護や環境保全に貢献できることは他にいくらでもあります。
太陽光発電を自宅に設置するのも良いでしょう。

今は地域の電力会社も自宅の屋根に無料で太陽光発電システムを設置するサービスを提供しています。

経済的なメリットはそう大きくはありませんが、それによって再エネ拡大=日本のエネルギー自給率向上には立派に貢献できます。

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割高な電気料金プランを選ぶと”実質100%再エネ電気”を使っているとみなされる仕組みを否定するわけではありません。
しかし「実質的な環境保全」につながる私たちの行動は別のところにあります。
すでに環境価値を支払っている電気代にさらにお金を出せる人は、それはそれで素晴らしいことですが、机上の空論はあまり真に受けないようにしましょう。

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